2023年7月に日本バドミントン協会(以下「協会」といいます。)は、2件の不祥事が新たに発生したことを発表しました。
不祥事の内容は以下の通り。
- 評議員の任期誤認
- 国際大会出場予定選手の派遣中止
昨今の協会は不祥事を続けて起こしており、体制の立て直しを図るためにも2023年6月18日に理事の改選を行ったところです。
新規体制になったにも関わらず、なぜ不祥事が続けざまに起こってしまったのでしょうか。
この記事では7月に発生した不祥事の概要などをご紹介します。
評議員の任期誤認問題
評議員の任期誤認問題の概要は以下の通りです。
- 本来2023年6月末で改選となる評議員の任期を2025年6月と協会全体で誤認していた
- 任期誤認については、協会が登記を行った際に法務局から指摘を受けて発覚した
- 2023年6月に新会長に就任した村井満氏も、2025年が改選タイミングであると引き継ぎを受けていた
- 誤った改選期日で引き継がれている点について現評議員から指摘はなかった
- 次期の評議員においては女性比率を50%にすることを掲げていた
- 2023年8月には新たな評議員を選出予定
新体制発足から1ヶ月もたたないうちの不祥事
協会は昨年までに続けて不祥事を起こしており、2023年6月に会長や理事の改選を行い体制の見直しをしているところでした。
新体制発足に伴いクリーンな活動を期待されていた協会でしたが、昨年に続く失態です。
評議員の任期誤認について村井新会長は「組織としての体をなしていない。私にも責任はある。」と述べています。会長就任から間もないため村井新会長に責任を問うのは気の毒だという考え方もあるかもしれません。
ただし、村井新会長も1月には副会長として就任していたため、今回の不祥事を防ぐ準備はできたのではないでしょうか。
前Jリーグチェアマンでもある経験豊富な村井新会長には、なにかと詰めの甘い協会の体質に一刻もはやくメスを入れてほしいものです。
2022年までの協会による不祥事
時期 | 内容 |
2017年〜 | 元職員の横領と、隠蔽とも取れる公表の遅れ |
2019年 | 国庫補助金の不正申請 |
2022年 | ヨネックスオープンジャパンにおいて、選手の名前を間違ってエントリー申請したことによる、緑川/齋藤ペアの不出場 |
評議員の役割
評議員の役割は本来、法人の業務が適正に処理されているか評価することです。協会が評議員の任期を誤認していたことについて、現評議員から何も指摘がなかった点に疑問に思う方も多いでしょう。
また、6月の新体制発足時に、新たな評議員は女性比率を50%にすることを掲げていました。ただし、8月に臨時評議員会を開催して新評議員を選出する予定であることから、男女比率の調整は先延ばしになるかもしれません。
いずれにせよ、評議員としての役割を適切に果たしてくれる新メンバーを選出してほしいところ。
選出理由などがしっかりと説明されなければ、納得できないバドミントンファンも多いでしょう。
協会の動向をしっかりチェックできる評議員が選出されれば、協会の不祥事も減るのではないでしょうか?
国際大会出場予定選手の派遣中止
国際大会出場予定選手が派遣中止になった問題の概要は以下の通りです。
- 大堀彩選手は7月に開催されたカナダオープンに出場予定であったが、入国手続きに不備があり不出場となった
- 協会がカナダへの入国に必要な電子ビザの申請した際、大堀選手の健康診断書の提出を求められたが、気づくのが遅れたため書類の準備が間に合わなかったことが原因
- 大堀選手への措置としてカナダオープンと同じグレードの大会へ派遣予定とのこと
生じてしまった選手への実害
大会に出場できなくなるという、現役選手に実害が生じた一件です。
エントリーミスにより混合ダブルスの緑川/齋藤ペアが2022年のヨネックスオープンに出場できなかった事例があったのにも関わらず、同じような失態が起きてしまいました。
すでにオリンピックレースが始まっており、1大会の重みが増しています。
なによりも選手が全力で競技に臨める環境を整えて欲しいところです。
田児選手も今回の不祥事について動画で喝を入れています。
チェック体制の見直しを
わずか1年未満の間で選手が大会に出場できない事案が複数発生したのは、現場業務の管理体制がずさんなためでしょう。
大会の出場申請業務を指揮監督する責任者による確認され、チェックフローがしっかりと定まっていれば、このような問題は起こらないはずです。再発防止策をしっかりと提示して欲しいと考えます。
そもそも「協会」って?
協会設立の目的
日本には各業界に様々な「協会」がありますが、そもそも「協会」って何でしょう。
簡単に言うと、「特定の目的のために集まった人たちが、目的を達成するために設立された組織」。
特定の業界において業界の発展などに尽力する目的で、その業界関係者が参加する協会などが日本には多く存在します。「日本バドミントン協会」もその一つです。
日本バドミントン協会ホームページに記載されている「定款」を確認すると、以下の通り。
第2章 目的及び事業
(目的)
第3条 この法人は、我が国におけるバドミントン界を統轄し、代表する団体として、バドミントンの普及振興を図り、もって国民の心身の健全な発達に寄与することを目的とする。
(事業)
第4条 この法人は、前条の目的を達成するために次の事業を行う。
(1)バドミントンの普及及び指導
(2)バドミントンに関する審判員及び指導員の養成及び資格の認定
(3)バドミントンに関する国際競技大会及び国内競技会の開催
(4)バドミントンに関する国際競技会への代表者の選考及び派遣
(5)バドミントンの競技力の向上
(6)その他この法人の目的を達成するために必要な事業
2. 前項の事業については、本邦及び海外において行うものとする。
(引用)https://www.badminton.or.jp/nba/teikan.html
この設立目的から分かることは、バドミントン競技に関わる全ての人々のスキル向上、国内外における活動を支援し、バドミントン業界の進捗発展を図りながら社会貢献することを目的に設立された組織、と認識できます。
このように、協会とは特定の目的を掲げて活動する組織で、その目的を達成するために賛同する会員と共に運営される組織です。
協会の運営
協会は、会長や理事長などのトップの下で理念に賛同した会員等によって運営が行われます。
協会を運営するための資金は、協会が行う事業をはじめ、会員の登録費用などでまかなわれています。(詳細は次項)
協会の存在意義
協会を設立・運営する際に最も大切なことは、「どのような目的のために存在して、どのような事業を行うの組織なのか?」という協会の存在意義です。
協会の存在意義や事業に、賛同をえられなければ会員を集められず、協会を運営するための安定的な収入である会費を集めることも難しくなります。
そのため、協会は「誰が」「どのような目的で」「どのような事業を行うのか」という協会の存在意義をしっかりと掲げ、守り、事業を行う仕組みを作り上げることが最も重要だと言えるでしょう。
一般プレーヤーへの影響
協会による一連の不祥事は、日本代表選手にこそ実害が出たものの、その他大勢の一般プレーヤーには影響が無いように思われがちです。
ただし、協会の不正が続けばバドミントン自体の価値低下につながり、競技そのものの魅力が失われます。意欲的にバドミントンへ打ち込めない環境は、全てのバドミントンファンとっての実害といえるでしょう。
また、協会は以下のさまざまなシーンでバドミントン関係者から収入を得ています。
- 協会への登録費
- 審判検定の登録料
- 協会主催の大会参加費
- 用器具審査認定料
これらの費用は決して安いものではなく、金額と同等以上の対価を受けていると感じる人は少ないのではないでしょうか。費用を徴収するのであれば、多くの愛好家がバドミントンにやりがいを持って携われる環境づくりに充てられることを望みます。
そのためにも協会が現体制を見直し、透明性の高い活動をすることが大前提であると感じるのです。