【バドミントン界のレジェンド】小さな巨人とよばれたパワーあるプレー、チョン・ジェソン(韓国)

バドミントンコラム

プロフィール

チョン・ジェソン(Jung Jae-sung: 정재성 : 鄭在成)

出身国: 韓国

生年月日: 1982年8月25日

逝去: 2018年3月9日(35歳)

身長: 168センチ

体重: 69kg

右利き

キャリア・エピソード

韓国を代表するバドミントン選手で、ダブルスの名手として有名。小柄ながらガッツ溢れるプレーが魅力的でした。
パートナーのイ・ヨンデ(李龍大)選手と最高世界ランキング1位にまで浮上。二人は2007年、2009年の世界バドミントン選手権男子ダブルスで準優勝を遂げ、2011年に銅メダルを獲得。2012年のロンドンオリンピックでは、男子ダブルスで銅メダルを獲得しました。
しかしながら、2018年3月に35歳の若さで突然の心臓発作で死去され、早すぎる死に世界が衝撃を受けました。

選手としての活躍

チョン・ジェソン選手がバドミントンを始めたのは小学生、7歳のとき。2000年には韓国ジュニアチームの一員として京都で開催されたアジアユース大会に出場し、男子ダブルス準優勝、男子団体では3位入賞を果たします。その後、中国広州での世界ユース大会でも混合団体3位入賞となりました。

2003年、チョン・ジェソンとイ・ジェジン(Lee Jae-jin:李在珍)は圓光大学校 (Wonkwang University)の代表として京畿道で行われた韓国全国選手権に参加。男子ダブルスで優勝。さらに翌年にも2人はタイトルを保持しました。2004年のアテネオリンピック後に所属チームの先輩が引退したことをきっかけに、チョン・ジェソンとイ・ジェジンは国際試合に参加しはじめ、2005年にはタイオープンで優勝します。

2006年は、イ・ヨンデ(Lee Yong Dae:李 龍大)とパートナーを組み、再びタイ・オープンで優勝しました。 この大会の決勝戦では昨年パートナーを組んでいたイ・ジェジンとファン・ジマンのペアと対戦するも、不戦勝としています。

同年のアジア競技大会で2人は、準決勝にてインドネシアのルルク・ハディヤント(Luluk Hadiyanto)とアルベント・ユリアント(Alvent Yulianto) に敗れた後、銅メダルを獲得。男子団体では韓国は決勝2–3で中国に敗れて準優勝となっています。

2007年1月、チョン・ジェソンとイ・ヨンデは韓国オープンの決勝でチームメイトのファン・ジマン(Hwang Jiman : 黄智万)/イ・ジェジン(Lee Jaejin : 李在珍)ペアを破り、この年唯一の優勝を果たします。この2ペアは、3月のドイツオープン、そして7月のタイオープンでも決勝戦で対決していますが、2回ともファン・ジマン/イ・ジェジンのペアが優勝しています。

2007年8月にマレーシア・クアラルンプールで開催された世界選手権では決勝戦まで勝ち進むものの、インドネシアのマルキス・キト/ヘンドラ・セティアワンのペアに敗れて準優勝となっています。この大会の準決勝戦では当時優勝候補だった日本の坂本修一/池田信太郎ペアを破っています。しかしながら、2007年の世界選手権の後、チョン・ジェソンとイ・ヨンデのペアの戦績はほとんどの試合で準々決勝を通過できない結果となりました。

2008年には調子を取り戻します。全英オープン、スイスオープン、中国オープンと優勝をもぎ取ります。トマス杯では決勝で1対3で中国に敗れるものの、韓国チームの準優勝に大きく貢献することとなりました。アジアバドミントン選手権大会でも2人は決勝でインドネシアのチャンドラ・ウィジャヤ/ノヴァ・ウィディアントのペアを破り金メダルを獲得しています。

▼チャンドラ・ウィジャヤ選手についてはこちら▼
https://badomintontimes.com/tips/48/

前半の好成績に期待が高まる一方で、2008年の北京オリンピックにおいては、なんと最初の試合で敗退。イ・ヨンデ選手は、混合ダブルスで金メダルを獲得しています。

世界バドミントン連盟(BWF)が2009年1月に発表した世界ランキングによると、チョン・ジェソンとイ・ヨンデは男子ダブルス部門で世界ランキング1位を獲得。韓国が男子ダブルスで世界の頂点に立ったのは、2004年のキム・ドンムン-ハ・テグォンペア以来5年ぶりのことでした。

2010年11月、チョン・ジェソンとイ・ヨンデは韓国の代表として広州アジア大会に出場、参加した男子ダブルスと男子団体で、それぞれ銀、銅の成績を残しました。

チョン・ジェソンは2011年末から肩のケガに悩まされていましたが、2012年のロンドンオリンピック後に引退する予定だったこともあり、2012年1月の韓国オープンに参戦するも、決勝戦で中国のペア(Cai Yun : 蔡贇/傅海峰 : Fu Haifengペア)に逆転負けしてしまいます。しかし2か月後の全英オープンの決勝戦でも再びこの対戦カードがあたり、今度は逆転勝ち。チョン・ジェソンとイ・ヨンデは2度目の全英オープン優勝に輝きます。

2012年 ロンドンオリンピック

2012年、チョン・ジェソンとイ・ヨンデはロンドンで開催された夏季オリンピックバドミントン競技男子ダブルスの権利を得ます。

世界ランキングはオリンピック前夜に一位に戻り、優勝候補として期待されていました。
オリンピック期間中、二人は順調にトーナメントを勝ち進み、準々決勝でインドネシアのペアに勝利。しかしながら、準決勝ではデンマークのマシアス・ボー (Mathias Boe)/カステン・モルガンソン(Carsten Mogensen)に1対2(21-17、18-21、20-22)で逆転負けしてしまいます。

試合後にチョン・ジェソンは「守備に集中し過ぎた。デンマークの相手に対しリズムを失い、気勢を失った」と述べたそうです。

結局、3位決定戦でマレーシアの古健傑/陳文宏を2対0(23-21、21-10)破り、銅メダル獲得。

これにてチョン・ジェソンは彼のバドミントン選手としてのキャリアに終止符を打しました。

引退その後

2012年9月10日、チョン・ジェソンは正式にバドミントン世界連盟から引退を表明。
引退後、一時的に韓国代表チームで男子ダブルスのコーチとして活躍し、その後はサムスン電機に移って監督に就任しました。

チョン・ジェソンが最後に表舞台に出たのは2018年冬季オリンピックの聖火伝達者をした際でした。

2018年3月9日、チョン・ジェソンは自宅で急逝したのを妻に発見されました。享年35歳。
チョン・ジェソンが亡くなった際、ドイツオープンが開催期間中で、大会では3月10日の試合開始前に、韓国チーム全員が一分間の黙祷を捧げました。

主な戦績

オリンピック

  • 2012年 ロンドン 銅

BWFワールドチャンピオンシップ

  • 2007年 マレーシア 銀
  • 2009年 インド 銀
  • 2011年 イギリス 銅

BWFスーパーシリーズ 金メダル

  • 2007年 
    • 韓国オープン 
  • 2008年 
    • イングランドオープン 
    • スイスオープン
    • 中国オープン
    • 香港オープン
  • 2009年 
    • マレーシアオープン
    • インドネシアオープン
    • 香港オープン
    • 中国オープン
    • ワールドスーパーシリーズマスターズファイナル
  • 2010年
    • 韓国オープン
    • 中国オープン
  • 2011年
    • 韓国オープン
    • 中国オープン
    • デンマークオープン
    • フランスオープン
  • 2012年
    • イングランドオープン
    • インドネシアオープン

BWFグランプリゴールド 金メダル

  • 2005年 
    • タイオープン
  • 2006年 
    • ドイツオープン
    • タイオープン
  • 2010年 
    • 台北オープン
  • 2011年 
    • ドイツオープン
    • タイオープン

BWFインターナショナル・チャレンジ

  • 2004年 ベトナム 銀
  • 2008年 韓国 金
  • 2009年 韓国 金

まとめ

小柄ながら熱量とガッツのあるプレーで男子ダブルス界を盛り上げたチョン・ジェソン。日本人にとって名前が知れているのはパートナーのイ・ヨンデ選手かもしれません。しかし、地道なトレーニングで身に着けた筋肉と、迫力のあるプレーは非常に大きな存在感があり、周りを圧倒していたのが印象的でした。世界の男子ダブルス界をけん引したのち、実業団の監督をする中での早すぎる死は、現在のバドミントン界にとって一つのモデルを失ったことは間違いないでしょう。

おまけ

韓国バドミントン界は、2008年北京五輪の混合ダブルスでイ・ヨンデ&イ・ヒョジョンのペアが金メダルを獲得したのを最後に、金メダルから遠ざかっており、2021年東京オリンピックでは、3大会ぶりの金メダル獲得に挑みました。

金メダル以外では、2012年ロンドン五輪の男子ダブルスでチョン・ジェソン&イ・ヨンデのペアが獲得した銅メダル、2016年リオ五輪のリオ五輪でシン・スンチャン&チョン・ギョンウンのペアが獲得した銅メダルがこれまでの結果でした。

東京オリンピックの女子ダブルス韓国勢同士の戦いとなった東京五輪バドミントン女子ダブルス3位決定戦。東京武蔵野の森総合スポーツプラザ開催された一戦は、キム・ソヨン(金昭映) &コン・ヒヨン(孔熙容) のペアが、イ・ソヒ(李昭希)&シン・スンチャン(申昇チャン)ペアを退け、銅メダルを獲得しています。

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